日時:2019年12月14日(土)14:00-17:00
場所:青山学院大学総研ビル14号館5階14504教室
1. 研究発表 14:00-15:25
題目:Perezhivanie in L2 learning: An ecological perspective on the dialectical unity of cognition and emotion
発表者:守屋亮(早稲田大学大学院)・野瀬由季子(大阪大学大学院)
概要:同様の経験でも学習者によってその経験の解釈・意味づけが異なることは多くの先行研究(e.g., Gkonou & Miller, in press; Moriya & Ishizuka, in press)で確認されているが、社会文化理論(Lantolf, Poehner, & Swain, 2018)ではこのような個々人における経験の質はperezhivanie (Vygotsky, 1994)として概念化され、環境や認知・感情が学習に与える影響を包括的に捉えようとする(e.g., Lantolf & Swain, 2019; Poehner & Swain, 2016; Veresov & Mok, 2018)。しかし、認知と感情に限っても両者の関係性が十分に研究されているとは言い難い(see Prior, 2019)ため、本研究では生態学的な立場に依拠し、国内における多様な学習者がどのようなperezhivanieを形成しているのかその理解を深めることを目的とする。
本発表では、質的研究主導型の混合研究法(Hesse-Biber, 2010)を実施するにあたって研究者のスタンス等を簡潔に紹介したのち、各データ収集やデータの位置づけ等に関する研究デザインを紹介する。研究の価値論・目的論的性質を踏まえ、参加者は現時点で日本語学習者の留学生7名、英語学習者の日本人学生7名の計14名である。本研究は2段階に分かれており、どちらの段階でも参加者には心拍計を装着してもらった。初回のセッションではMYE (Gkonou & Oxford, 2016)というシナリオ式のアンケートに回答してもらい、2回目のセッションではAffect Grid (Russell, Weiss, & Mendelsohn, 1986)という9×9マスの表を用いてシナリオから生じた感情を自己評価してもらった後に、アンケートや自己評価の回答内容、心拍数を基に半構造化インタビューを行った。データが多岐におよぶため、分析はMoriya (2019)の4次元モデルを踏まえ、複数の質的分析を探索的に実施した。当日は参加者とデータや分析結果等を共有し、perezhivanieへの理解を協働的に深めていければ幸いである。
2. 研究発表 15:40-17:00
題目:Needs Analysis for Senior High School English Teachers in Japan and Teacher Training to Develop Students' Fluency through Task-Based Language Teaching
発表者:蕨知英(工学院大学附属中学・高等学校)
概要:新学習指導要領では、スピーキングが「発表」と「やり取り」に分けられ、学校教育現場ではそれらの指導と評価方法の確立が喫緊の課題である。実際に、最新の全国学力調査の結果から生徒のスピーキング力に課題があることが明らかになった。しかし、文法の正確性を重視する指導法は現場で根強く、流暢性を伸ばす指導がどれくらい行われているのかを疑問に思った。そこで、本研究では、現役の高校英語教師にインタビューを実施し、スピーキング指導に関するニーズ分析(Long, 2015)を行った。そのニーズ分析に基づいてワークショップを開催し、スピーキングの流暢を伸ばす指導の重要度およびスピーキングスキルやストラテジー(Goh and Burns,2012)の重要度に変化があったかについてテーマ分析を用いた。なお、本研究はリーズ大学大学院の修士論文として提出した。当日は、この研究をどのように発展させていけばいいかについてご教授いただけると幸いです。
日時:2019年9月28日(土)14:00-17:00
場所:青山学院大学15号館3階15306教室
1. 研究発表 14:00-15:25
題目:日本人英語教師の教師効力感の変化の過程に関する一考察
発表者:石橋弘規(千葉大学大学院)
概要:教師効力感は、生徒の学習や動機づけ、教師の姿勢など様々な要因との関係について研究がなされ、特に英語教師においては、英語力や教育改革等と教師効力感との関係が報告されている。しかし、長期にわたる変化を扱った研究は少なく、Wyatt(2013)は、各要因との関係の複雑性を明らかにするためには、長期的な視点での変化の過程に焦点を当てる必要があると述べている。そこで、本研究では、日本人英語教師にインタビューを行い、教師生活を通しての教師効力感の変化の過程と、変化に影響を与えたと認知された要因を分析する。なお、文化・環境的な側面の影響を考慮する必要性(Thompson & Woodman, 2018)を踏まえ、サトウら(2015)による複線径路等至性アプローチ (Trajectory Equifinality Approach: TEA)を分析手法として採用した。当日は、今後の研究についてご教授いただければ幸いです。
2. 研究発表 15:40-17:00
題目:英語教員の学びのプロセス:海外研修から日本の現場へ
発表者::栗原ゆか(東海大学)
概要:本研究の目的は中・高等学校などの現役英語教員を対象とした海外教員研修を一例に、教員が研修を終えそれぞれの学校において授業をする際、学んだ知識やスキルをどのように自分のものにしようとしているのかというアプロプリエーションの過程について明らかにすることである。ヴィゴツキーの文化的・歴史的発達理論を本研究の理論的枠組みとし、研究参加教員の学びの過程を質的研究により探求する。当日の研究発表では、ヴィゴツキーの発達理論を教員の学びに応用する際、一つの方法としてどのようなデータ収集そして分析ができるかについて紹介しながら、英語教員が様々な活動場所を利用し研修で学んだことを授業で活かそうとする過程を述べる。
日時:2019年6月15日(土)14:00-17:00
場所:青山学院大学15号館3階15301教室
1. 研究発表 14:00-15:25
題目:日本人英語学習者の不平発話行為運用に対する英語母語話者による適切性判断の分析
発表者:梅木璃子(広島大学大学院)
概要:本研究の目的は、日本人英語学習者が英語で遂行する不平という発話行為に対する課題を明らかにし、日本人学習者が遂行すべき適切な発話行為について検討することである。不平発話行為研究を概観すると、話し手によって遂行された不平発話行為をどのように受け入れるか、またどのように適切さを判断するのか」という適切性判断に関する研究は、極めて希少であることが明らかになった。それを踏まえて、本研究では、修正版グランデッドセオリーアプローチを用いて英語母語話者が行う適切性判断のメカニズムの解明を試みた。本研究の結果としては、英語学習者が適切性判断を行う際の記述を分析すると6つの共通したカテゴリーが抽出され、またそれらのカテゴリーは適切性判断を行う際に用いる自身の評価観点であると考える。当日の発表では、主に結果と考察について詳しく述べたい。
2. 研究発表 15:40-17:00
題目:熟練英語教師の教科書使用に影響を与える要因
発表者:山路理恵(宮崎県立宮崎西高等学校附属中学校)
概要:本発表では,安田・サトウ(2012)による複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model: TEM)を分析ツールとして用いた研究の一例を紹介する。研究内容は,日本の中学校英語教師の言語教師認知を,Borg(2006)の概念的枠組みをもとに明らかにすることを目的としたものである。インタビューデータによると,対象者とした4名の熟練教師は,初期から現在の段階に至るまでに教科書使用において変容を経ている。その要因を探るために,教科書を主体的に使用する現在の段階を等至点,訳読式授業で教科書を使用した学習経験を必須通過点および分岐点とし,等至点までの径路をTEM図に表した。TEMは,英語教育分野においては,学習者の自己調整学習に対する形成的フィードバックの効果を明らかにしたTsuchiya(2018)でも用いられている。当日は,TEMによる分析方法と汎用可能性に関する議論により,理解を深めたい。